東京工業大学 生命理工学院 生命理工学系
石井研究室

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Research
石井研究室では固体NMR分光法を使って原子レベルの分子構造から生命現象の謎に迫っています。 特に最近はアミロイドタンパク質の構造測定を通して、アルツハイマー病等の発症の分子レベルのメカニズムを解き明かし、治療の糸口を探ることに力をいれています。 主な武器としてつかっている固体NMR分光法の技術も世界最高レベルで、自分たちの開発した新しい手法で従来は理解できなかった生命現象の謎を解き明かすことは非常にやりがいのある仕事です。生物・生化学だけでなく物理化学、コンピューター科学などに興味がある人も力を発揮できる学際的な研究がやりやすい研究室です。理化学研究所や海外のラボとのコラボレーションも積極的に進めています。

1. アルツハイマー病の発症過程の解明
私たちの主なターゲットは、アルツハイマー型認知症の主な原因とされているアミロイドβタンパク(Aβ)です。 Aβは単独では無害なタンパク質ですが、多くのAβが凝集して、線維の構造に変化(Misfolding)することで強い神経毒性を示すようになります。 当研究室では凝集体の立体構造の解析とその形成過程を調べています(1,2)。 例えば、アルツハイマー病の原因と目されているAβ42が凝集して形成されるアミロイド線維の分子構造を固体NMRによって世界で初めて解明しました(2)。 現在は、患者の脳内に存在するAβの構造やアミロイドが脳内で伝播する仕組みを探っています。抗体や小分子とのアミロイドの相互作用も研究スコープに入っています。

1. Nat. Struct. Mol. Biol., 14, 1157-1164 (2007).
2. Nat. Struct. Mol. Biol., 22, 499-505 (2015).


brain


2. 固体NMR法の高感度・高分解能化

アミロイドのような難溶性かつ結晶をつくりにくい物質の構造解析に対して、固体NMRは非常に強力な解析手段です。 しかし、固体NMRは信号の感度が低く、これがタンパク質等の生体試料の固体NMR測定の高い壁となっていました。 私たちは、新たな測定法の開発と新規の試料調製法により、固体NMR信号の感度・分解能を劇的に高めることにこれまで成功しています(3)。 これより、従来法の必要量の1/100~1/1000であるnmolオーダーの微量タンパク質試料に対する固体NMR測定も可能となりました(4)。 また、NMRと電子顕微鏡などの併用による細胞や生体より取り出した生体試料の解析や超高速の多次元NMR法など未来志向のNMRの方法論も追求しています。

3. Nature Methods 6(3), 215-218 (2009).
4. J. Magn. Reson. 286, 99-109 (2018).


nmr


3. ナノ材料の構造解析

生体分子のみならず、固体NMRを使って幅広い材料の解析が可能です。 当研究室では、グラフェン誘導体などのナノ材料の解析等もおこなっています。 例えばグラフェンを酸化したグラフェンオキサイド等の構造は構造の乱れのため電子顕微鏡での解析が困難でしたが、 固体NMRとab-initio化学シフト計算でその構造に迫ることができます(5, 6)。 リチウムやアルミニウムのような無機元素も測定可能であるため、他の分光法では観測困難な無機材料や電池材料などの構造解析にも有効です。

5. Science 321, 1815-1817 (2008).
6. J. Am. Chem. Soc. 132(16), 5672-5676 (2010).

carbon

学生へのメッセージ
当研究室では固体NMR法を用いて、分子の構造を通して生命と世界を俯瞰するという観点から研究を進めています。 NMR分光法をかなり深いところまで学びますが、あとは各人の興味にあわせて研究プロジェクトを選び、必要な分野のスキルと知識を吸収していきます。 NMRだけでなく、生化学や他の先端機器も幅広く学ぶことが出来ます。 学生さんは自分の得意の分野を生かして、他の分野が得意な学生さんやスタッフとコラボレーションして、分野を横断した問題の解決を行います。 自主性と“JOY OF SCIENCE”を合い言葉に、科学の楽しさと深さを実感してもらえるようにラボ運営を行っています。


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